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2010年1月7日〜2月4日
授業の概要
実施日時 | 1月7日(木)〜2月5日(金)までの授業期間全11時間 |
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実施場所 | MMRC(マルチメディアリソースセンター)内実習エリア |
教員 | 情報科 白壁夏美、登本洋子 |
対象 | 12年生(高校3年生)プログラミング選択者 |
教材 | マイクロソフトとベネッセコーポレーションによる理数系人材育成プログラム 「ロボットを作ろう、動かそう〜四足歩行ロボットで体感する、未来の情報社会〜」 |
授業の目的
PC上でのみ学習したプログラミングが、ロボットの動作にどのようにつながるかを体験させ、身の回りで動く機械の仕様に興味を持たせることにより、ITやプログラミングへのさらなる興味につなげます。
授業の構成
時間 | 内容 | 詳細 |
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1 | オリエンテーション | ロボット概要説明、グループ分け |
2 | ロボットの組み立て | ロボットの組み立て |
3 | ロボットの組み立て | ロボットの組み立て、動作確認 |
4 | プログラミング実習 | ロボット動作のためのプログラミング基本説明 |
5 | プログラミング実習 | ロボットを歩かせる(前進) |
6 | プログラミング実習 | ロボットを歩かせる(前後進) |
7 | プログラミング実習 | ロボットを歩かせる(右左折) |
8 | プログラミング実習 | ロボットに一芸させる |
9 | プログラミング実習 | 試走、ロボット動作調整 |
10 | ロボット最終調整 | ロボット動作最終調整、プレゼン準備 |
11 | ロボットレース | ロボットレース、ロボット一芸披露(プレゼンテーション) |
授業の報告
4月〜12月まで、Visual Basicを一通り学習したプログラミング選択者を対象に、四足歩行ロボットの組み立てと、プログラミング制作を課題としました。授業1時間目に、授業の主旨を説明した後、3名を1チームとし、ロボットのキットとマニュアルを配付。最終授業での競技で、ロボットレースでは速さを競うこと、ロボット一芸披露では、高度な技を披露することを目標としました。
この間の授業においては、ただ単純にプログラミングを理解するだけでなく、共同作業におけるものづくりも体験してほしかったため、教員は基本的に見守ることに徹しました。つい口を出してしまいそうになりますが、「マニュアルを読み解けば必ず完成するから、自分たちで考えて作りなさい」という姿勢を貫きました。チームを3名構成にしたのも、2人だと少なすぎる、4名だと作業に加わらない(加わることができない)生徒が出てくるために、3名で設定し、どのように分担すれば早く完成に近づけるのかということには時々ヒントを与えました。
- ロボットの組み立て
本授業を展開するにあたり、一番心配していたのは、このロボットの組み立てでした。制御基板、モーター、電池ボックス等を細かなネジで組み立てていきます。当初、部品を紛失してしまうのではないか、細かな作業が苦手な生徒もいるのではないか、特に女子生徒が拒否反応を起こすのではないかということを懸念していました。しかし、そのような心配をよそに、生徒はいつもよりも静まり返って、作業に熱中。もしかすると教員の心配が、生徒の体験の機会を奪っていることもあるかもしれないと思うほど、どのチームも難なく組み立ててくれました。教材としては、必ずしもネジを使う必要はなく、両面テープでも代用できるように考えられていますが、ネジでの作成を選択してよかったと思いました。
教員側で用意した、ロボットの動作確認プログラムでチェックし、首、前右足、前左足、後右足、後左足の計5ヶ所が問題なく動くということが確認されたところで、ロボットの組み立てが完成。完成したチームから次の工程へと進みます。 - プログラミング実習
Visual Basicの基本を一通り学んだ生徒であるため、教員からプログラミングに関する説明は特に行わなかった。生徒は、どのように動かせば、スムーズに歩かせることができるのかを目指します。
教材としているロボットが動作する部分は、首、前右足、前左足、後右足、後左足の計5ヶ所。「歩く」という動作も、通常特に意識せずにおこなっていますが、実際にロボットを歩かせようとすると、意外と難しい。「え〜、いつもどうやって歩いているんだろう?」とハイハイの姿勢を取り、「歩く」動作の分析を始めた者も少なくありませんでした。結果、ロボットの足の動かし方は、主に下記3つに集約されました。チーム独自の要素が加わってきて、授業の面白味も増してきます。
1.チーターのように左右の前足と左右の後ろ足を同時に広げた後、同時に縮める
2.犬・猫のように右前足と右後ろ足を同時に進め、次に左前足・後ろ足を同時に進める
3.動きは前右足と前左足だけに任せ、後ろ足は一切動かさない
ロボットの一芸披露の準備に関しては、他のチームにわからないように、高度な芸を模索していたチームが多かったです。一度ベネッセの方が授業に来てくださり、他校での「バク転(後方転回)」のVTRなどを見せてくださったことも、生徒の関心を高めることにつながったと考えられます。最終授業における競技の直前まで生徒の挑戦が続きました。 - 授業最終日:ロボットレース
スタートからゴールまでのタイムを競うロボットレース。
レースの舞台はMMRCの通称「わかめテーブル」。波打つデザインがコースの難所です。
テーブルから落ちた場合は、タイムを止めず、スタート地点に戻って再スタートというルールとしました。
自分の作ったプログラムでロボットに指示を出しながらゴールを目指します。手に汗握り、ついロボットを応援してしまうレース展開となりました。
- 授業最終日:ロボット一芸披露
ロボット一芸披露では、本棚の上を舞台に、ロボットに一芸をさせ、その技とプレゼンテーション力を競います。
「でんぐり返りをします」「だだっこです」などの芸が無事成功すると拍手が起きました。
生徒の感想〜1年間のプログラミング授業の感想〜
少し興味があったため「プログラミング」を選択しました。最初は、何をやるのか全くわからず本当に一からの勉強でした。しかし、授業を通してプログラミングの面白さと大変さを学び、結果として自分の進路に関わる大きなことになりました。
また、プログラミングの授業を受けたことによって、日々使う携帯や、インターネット、ゲームなどもこのようなコードを書いているのかな?と使っている言語は違うのだろうけど、自分がわかる範囲で予想したりするようになり自分にとって大きな影響があったと思います。
4足歩行のロボットの授業は楽しかったのですが、ちょっと時間が足りなかったかなとも思いました。基本的な動きを考える時間しかなかったので、さらに無駄がなく、早く動かす為にはどうすればいいのか、左折右折があまりうまくいかなかったので、もっとスムーズに動かせるように改良を加えられる時間があったらなと思いました。
授業を振り返って
私たちの身の回りにある多くのものには高度な技術が使われていてブラックボックス化しています。使い方はわかるし、便利に活用しているのですが、その仕組みはわからないということが多い。そのようなものに囲まれて育っている生徒だからこそ、一から組み立て、自分で書いたプログラムで動かす体験をしてほしいという願いから今回の教材を選択しました。
初めての本教材導入であったので、生徒がどのような反応を返してくれるのか不安もありましたが、実際授業を始めてみると、生徒は熱中して取り組んでくれました。そして、自分たちで組み立てたロボットに、自分たちで書いたプログラミングで動きを加える。実際は、部品を組み合わせただけの荒々しいロボットが、途中から可愛く見えてくるから不思議です。
首、前右足、前左足、後右足、後左足のたった5ヶ所を動かして、四足歩行を目指すわけですが、最初はなかなか思う通りに動いてくれません。四足歩行と言っても、首の動きが大切なことにも気づかされます。簡単そうでなかなか思うようにいかない動作に生徒は夢中になります。目標を達成するためには、チーム内の協力も必要不可欠です。
本来技術は、何かを実現するためのものです。目的に向かって、持っている技術を駆使して、試行錯誤を繰り返してくれたところで、今回の授業は成功です。VBの基礎を一通り学んできた生徒であったので、実際にロボットを動かしてみたことにより、プログラミングは実際にはこのような場面で使われているのだという体験にもつながったと思われます。
いくつか課題もありました。いずれかのモーターが動かなくなってしまったチームが2チーム発生し、部品故障は生徒ではどう取り組んでも解決できない問題であるため、生徒のモチベーションが下がってしまいました。事前にモーターの替えを用意しておく必要があったでしょう。また、デスクトップパソコンが設置されている通常の情報科の実習室では、チームでの作業が困難であったため、別な場所を確保して、今回の実習をおこないましたが、教員側の準備が毎回大変でした。今回は入試等を控えた生徒が抜けていて少人数での授業でしたのでなんとかなりましたが、通常のクラス人数では対応に苦慮することが推測されます。今回の教材は、プログラミングを学ぶ前の導入教材として使用することも有効であると考えられますが、クラスの人数が多い場合、どのように対応するか課題です。