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2020年3月
玉川学園でLEGO Mindstorms RCXを初めて導入して、今年度でちょうど20年目となる。
1998年に発売されたRCXを、翌1999年から高等部自由研究でロボット製作を始めたのが原点である。SonyのVAIO(Windows98)を中古で用意したことを懐かしく思い出す。2020年1月にSPIKEプライムが発売となり、今年でハードウェア4世代目、ソフトウェア5世代目が新たに加わった。
懐かしの写真を紹介。撮影したデジカメも20年前の最新鋭機Sony Mavica(フロッピーディスクに直接記録!80万画素!)
WRO2019
今年度は4チームが出場した。
1. 小学生ベーシック競技沼津予選会にて優秀賞受賞
2. 小学生エキスパート競技浜松予選会参加
3. 中学生エキスパート競技厚木予選会第3位入賞
4. 高校生エキスパート競技厚木予選会参加
小学生2チームは、開催日の都合で静岡県の予選会に出場することとなった。これまでに参加したことのない大会で、宿泊も伴うことから戸惑うこともあったが、大会前夜にホテルの部屋で最後まで調整を行い、両チームとも学校で練習した走行をさせることができた。
また、WROエキスパート競技用コートがFLLコートに近いデザインとなり、これまでのようにカッティングシートで自作することが困難となった。しかも通常の印刷業者では対応できない大型サイズ。これを1枚1万円で印刷してくれる業者を見つけたのも今年の収穫だった。
中学生チームのロボットも、目標地点に正確に到達させるのに苦労した。オブジェクトを運ぶ機構、ロボットが移動するルートとマシンのサイズのバランス。追い込みに入った夏休み中、高校生チームと共に活動していたのだが、両チームとも毎日頭を抱えながら、わずかずつ進歩させて当日を迎えた。どのチームもなかなか得点が伸びない中、練習の成果が出せた玉川チームはなんとか3位に入ることができた。PID制御に思い切って挑戦したことが功を奏したと言えるだろう。
高校生エキスパート用ロボットは、マシン担当とプログラム担当がそれぞれ見事な技術力を見せた。精度を上げるため、オブジェクトを持ち上げ、向きを変え、配置する機構を何度も作り変えることになったが、毎回驚くほど短時間で改良してしまうマシン担当者の力量は大変見事であった。
プログラムではマイブロックを積極的に導入した結果25個ほどにも増え、プログラムを開くだけで30分ほどかかる大規模なものとなった。大会直前にはきっかり2分でゴールできるところまでチューンアップできていた。大会当日午前中の試走時間にも、綺麗なゴールを見せていた。ところが午後の本番になり、スタートから10cmほど進んで止まってしまった。リセットしても効果なく、大変悔しい思いをした。学校に戻ってみるとすっかり元どおりの走りを見せ、いまだに大会当日の不具合の原因がわかっていない。
高校生エキスパートロボットの動画をご覧ください。
PID制御
中学生、高校生チームはライントレースの正確性を高めるため、PID制御を研究した。まだ習っていない微分積分を理解するため、本を読み、数学の先生に質問し、最終的にEV3用プログラムとして自分の力で完成させた時には、隅々まで理解することができていた。2mほどある直線を全くぶれずにロボットが進む姿が見られただけではなく、正確に目的地にたどり着く姿は何度見ても感心するものであった。大会後には後輩のために、PID制御解説書を作るに至った。ロボット部の財産となることだろう。
FLL “CITY SHAPER”
今年2年目となるFLLチームは、“CITY SHAPER”というキーワードから自分たちのチームのテーマを、春から皆で検討を始めた。その結果、「聴覚障がい者がより快適に鉄道を利用できる環境作り」をプロジェクトの提案とすることが決まった。メンバーの中に人工内耳を利用している生徒がいたことがヒントとなった。保護者からお話を伺う機会を設けたほか、「ダイアログ・イン・サイレンス」という音のない世界を体験するイベントに生徒と保護者で参加した。新宿で2週間だけ開催されたイベントである。中に入ると、10人ほどが入れる部屋が10個ほどつながっており、一部屋ごとにテーマが異なる体験をするように工夫されていた。人工内耳を着けている息子を持つ保護者も参加したのだが、「耳の聞こえないことがこんなに大変なことだとは思わなかった。」とおっしゃっていた。
さらに技術的な面を知るために、人工内耳を製作している会社「日本コクレア」を訪問した。人工内耳とはどういう技術か、いかに技術革新を遂げてきたか、など予定時間をオーバーするほど多岐にわたるお話や、実際に機械の内部を見せていただくこともでき、FLLをきっかけに思いがけない非常に貴重な
学習会となった。今年の聴覚障がい者にかんする研究の中で、表記方法についても意識が変わってきているのだということを強く感じた。例えば「障がい」である。「障害」と表記すると「害」がある人であるかのようなイメージが付くことを避けるため、「障がい」とする。「障がいを持つ」のではなく「障がいがある」とした方がより適切、などの考え方があることを知り、意識を新たにすることができた。
9月には念願の競技コートが届き、プレゼンテーション準備とロボット製作が始まった。なかなか思うように得点が伸びない期間があったが、ついに自分たちに当初の目標点を超え、さらに高い目標点に設定し直すまでになった。また、今年度は記録ノートを毎日しっかりとつけるようになった。プログラムでは先輩たちがPID制御を研究したことから、これを途中から導入することになり、直進性がよくなった上に時間短縮にもつながった。
12月15日東京工業大学、新しいルールに則って準備を整えて大会に臨んだ。プレゼンテーション3つはそれまでの練習の成果が現れ、最もスムーズな発表となった。ロボット競技も練習通りの得点を出すことができたと言える。今年度は上位25%ほどが日本大会に進出できることになり、我がチームは東日本大会止まりとなったが、これまでの取り組みが十分に発揮できた大会となった。
小学部学園展
2月22日、23日、小学部学園展に今年も参加した。
FLL競技コート、迷路ゲーム(9年生製作)、バスケットゲーム(6年生製作)、SPIKEプライムの4つを準備した。迷路ゲームは過去にも小学部展用に製作した例があったが、今年のものはコース上にゲートが2箇所あり、タッチセンサーを押すとゲートが開いて先に進むことができる、という複雑な構造のものであった。さらに2つ目のゲートは幅がやや狭くなっており、正確にロボットを制御する必要のある設計になっていた。
バスケットゲームはピンポン球を「投げる」機構を持つ、ロボット部として初めてのゲームであった。これまで転がしてシュートする方式の作品はたくさんあったが、斜方投射でシュートする仕組みを作り上げたことはロボット部の歴史の新たな1ページとなった。6年生2人が前日までうまく飛ばず、くじけそうになりながらついに完成させたゲームで、難易度も適度で、小学生たちが何度も何度も挑戦している姿が見られた。
バスケットゲームの動画をご覧ください。
今年は理科室をロボット部の発表場所に割り当てられた。理科の実験用の机のため重量があり、ロボット展示用に並べても子供達が身を乗り出して机がずれてしまうことがなかった。また、小学生用の高さで設計されている低い机のため、ゲームコートを載せても十分に小学生の身長でコートが見え、例年のコンピュータ室よりも良い環境で発表することができた。
「SPIKEプライム」は1月9日に発売されたばかりの新製品である。イベントで展示するのは小学部・が初めてとなった。今回はFLL用ベースロボットとともに、本体のみを使って電卓機能をプログラムしたものを発表した。Scratchを応用した新しいソフトウェアとなったが、8年生がテキパキとプログラムを組み上げ、小学部展期間中にも性能がアップしていた。本体をタップすることで入力確定しているのは加速度センサー、計算にはリスト機能を使っている。動画で「9/5+2=3.8」を計算する様子を紹介する。
プリンターロボット
2019年3月末にLEGO社よりMicroPythonが発表された。プログラム言語を書いていく作業はロボット部には馴染みがないが、11年生が挑戦した。2年間かけて「プリンターロボット」の組み立てを続けており、いよいよ今年はプログラムを組む段階に来ていた。動画を2つ紹介する。1つ目は9月ペガサス祭の段階の作品で、アルファベットを一文字ずつプログラム化してあり、組み合わせて英単語を書いてみせるロボット。ペガサス祭にいらっしゃった学園長先生にもPythonを実用化している例として大変興味を持っていただいた。2つめはドット絵でウサギを書いている場面である。